ご依頼者様のプロフィール
依頼者:Cさん(男性)
関係性:被相続人の弟
被相続人:お兄様
相手方:Xさん(Cさんの遠い親戚)
相続財産の内容
不動産・預貯金合わせて約3,000万円
ご相談のきっかけ
ある日、Cさんのもとに、お兄様が生前お世話になっていた施設から一通の手紙が届きました。
内容は、
- お兄様が亡くなったこと
- 相続人であるXさんがすでに相続手続きを始めたこと
といったものでした。
しかし、Cさんにとって、Xさんは遠い親戚の一人。
子どものいないお兄様の相続人は自分だけのはずなのに、なぜXさんが手続きを進めているのか疑問を抱きました。
すぐに戸籍を取り寄せて確認したところ、なんとお兄様が亡くなるわずか1ヵ月前に、Xさんと養子縁組をしていたことが発覚。
Cさんは「これはおかしい」と感じ、当事務所へご相談くださいました。
当事務所の対応
まず、お兄様がお世話になっていた施設へ事実確認を行うことに。
丁寧に事情を伺う必要があったため、弁護士が施設宛てに手紙を送り、直接訪問してお話を伺うことになりました。
施設で確認できた資料は以下のとおりです。
- 訪問記録:Xさんはお兄様が亡くなる前後に数回しか訪問していないことが判明。
- 看護記録:お兄様は認知機能が著しく低下しており、認知症の判断基準である「長谷川式スケール」の点数も4点程度と、正常な判断が困難な状態だったことが確認できました。
さらに、介護認定の書類を作成した医師の面談もおこなうことで、「本人(お兄様)の判断能力はない」という判断をすることができました。
これらの資料から、お兄様の当時の状況では養子縁組の意思表示をすることは著しく難しかったと判断。
この証拠をもとに、Xさんへ
- 養子縁組は無効であること
- 勝手に引き出していた預金の返還
を求める通知を送りました。
相手方の主張と訴訟の経緯
Xさん側は、「養子縁組は正当なものだ」と主張。
一般的に考えれば、この主張には無理があり、もしXさんに弁護士がついていれば、このような主張にはならなかったと思われます。
しかし、今回はXさんが自身で手続きを進めていたため、話し合いでは解決の見込みがないと判断。
そこで、養子縁組無効の確認訴訟を提起しました。
結果
訴訟の結果、当事務所の主張が全面的に認められ、養子縁組は無効と判断。
Cさんが正当な相続人としてお兄様の遺産を相続することができ、さらにXさんが勝手に引き出していた預貯金も取り戻すことができました。
担当弁護士のコメント
今回のように、高齢で判断能力の低下した方との養子縁組が問題になるケースは少なくありません。
施設の記録や医師の診断書など、客観的な証拠を丁寧に集めることが、裁判での重要な判断材料になりました。
もし、相続手続きに疑問がある場合は、すぐに専門家へ相談し、状況を確認することが大切です。
万が一に備え、施設の記録や診断書の控えなども早めに確保しておくと、後のトラブル防止にもつながります。