問題社員とモンスター社員の違い
いわゆる「問題社員」といっても、その内容は様々です。業務命令に従わない、遅刻や欠勤を繰り返す、協調性がないなどの行動から、法に触れる行為に及ぶケースまで幅広く存在します。
こうした社員への対応を誤ると、他の従業員の士気低下や離職、職場全体の雰囲気の悪化といった重大な影響を招くおそれがあります。そのため、早期に適切な対応をとることが重要です。
なお、問題社員とは「遅刻や欠勤を繰り返す」、「協調性がない」、「指示に従わない」といったような問題があり、しかも会社が指導してもなかなか改善できない従業員をいいます。
特に、自分に問題があるという認識を持たず、周囲に迷惑をかけ続けるような社員は「モンスター社員」と呼ばれることが多いです。
問題社員に対する対応方法
問題社員には様々なケースがありますが、各ケースに共通する対応方法の基本は以下のとおりです。
1.問題行動があったときは直ちに指導をする
問題行動があったら直ちに指導することが対応の基本でありとても重要です。
問題のある社員が、業務上のスキルや知識不足である場合、研修や教育の提供を行うことで、問題の解決につながります。
具体的には、介護の基礎知識や技術の習得、コミュニケーションスキルの向上などが挙げられます。
「退職されてしまうと業務がまわらなくなると思って我慢しよう」
「指導すると反発してくるので、それを避けるために見て見ぬふりをしよう」
「成績はよいので問題行動については目をつぶろう」
といった対応は、往々にしておこなわれがちですが、このような対応をすると問題行動が拡大し、モンスター化する危険があります。
また、従業員が同じ問題行動をした場合に、統一的な指導や対応ができないと、指導等をしても単に機嫌が悪かったから怒ったんだろうと受け取られることになってしまいます。
そのため、遠慮せずにその都度繰り返し指導すること、問題行動があった場合は必ず指導することが大切です。
指導をするときは、感情を入れずに、端的に問題点を伝えるようにしましょう。感情的になってしまったり、持って回ったような言い方をしたり、嫌みな言い方をするのは、よくありません。
仕事ができない社員に対して、「新人以下だな」といった感情的な言い方をすると相手の反発を買うだけであり、場合によってはパワハラと評価されます。
そうではなく、「どのようにすべきなのか」という問題に対応した具体的な改善方法を端的に伝えることが必要です。
2.毎月面談をする
問題社員の発生やモンスター社員化を防ぐためには、日頃からのコミュニケーションが何より重要です。
問題社員かどうかにかかわらず、毎月の面談を実施し、経営者や上司が従業員一人ひとりと向き合い、フィードバックを行うことが、良い職場環境づくりと社員育成の基本となります。
問題行動が目立つ社員の多くは、職場内でのコミュニケーションが不足し、孤立しているケースも少なくありません。
そのため、まずは日常的な対話や面談を通じて信頼関係を築くことが重要です。
また、問題が発生した際には、普段からの関係性を土台に速やかに適切な指導を行うことが求められます。
ただし、普段の関わりがないままいきなり注意すると、相手の反発を招き逆効果になることもあるため、指導しやすい職場の雰囲気づくりが重要です。
さらに、指導を行った後は、その改善状況を必ず確認し、必要があれば再度の指導を行うという継続的なフォローアップも欠かせません。
この積み重ねが、問題社員の発生防止と職場の健全化につながります。
3.厳しい対応(懲戒処分)も必要
指導や面談を行っても問題行動が改善されないときは、厳しい対応(懲戒処分)を検討することが必要です。
懲戒処分を行うことで本人に対して警告を与えると同時に、周囲の従業員に対しても問題行動を許さないという会社の姿勢を明確にし、会社の規律を正すことができます。
懲戒処分には、「譴責」、「減給」、「出勤停止」、「降格」などがあり、問題行動のレベルに応じて適切な懲戒処分を選択することが必要です。
4.懲戒処分をしても改まらないときは退職勧奨を検討する
懲戒処分をしても改まらないときは、問題社員を退職に向けて説得する退職勧奨を検討します。
退職勧奨とは、従業員を退職に向けて説得し、同意を得て退職させることを指します。
解雇と比べて、従業員の同意を得ている点でトラブルになりにくく、企業としてのリスクも低いというメリットがあります。
5.退職勧奨に応じないときは解雇を検討する
問題社員・モンスター社員が退職勧奨にも応じないときは解雇を検討します。
ただし、解雇については、解雇後に従業員が不当解雇であると主張して、解雇の撤回の要求や金銭請求をしてくるケースも多いので慎重な判断が必要です。
しかし、このようなリスクを踏まえても、会社経営者として従業員を解雇しなければならない場面もあるでしょう。
そこで、企業が能力不足の従業員を解雇する前にリスク対策として、確認しておきたいポイントをおさえておきたいと思います。
ポイント➀:解雇の理由とした従業員のミスが本人のものであることを立証できるか
たとえば、従業員が重大な業務上のミスを繰り返すために能力不足を理由に解雇する場合、裁判で企業側がそのミスが本人のものであることを立証できなければ、裁判所に不当解雇と判断されます。
そして、敗訴したときは、従業員を復職させることに加え、冒頭でご説明したように解雇の時点にさかのぼって賃金の支払いを命じられることになってしまいます。
ポイント➁:従業員の能力不足は会社の教育不足が原因であると判断されるリスクはないか
たとえば、企業が従業員の能力不足を理由として行う解雇のケースでは、「能力不足は会社の教育不足が原因である」として、裁判所に不当解雇と判断されることが少なくありません。
そのため企業として従業員のレベルに応じて必要な指導や教育を施してきたかいなかが重要なポイントとなります。
ポイント➂:待遇改善の要望や労働組合への加入を理由に解雇したと判断されるリスクはないか。
企業が能力不足を理由として従業員を解雇した場面において、解雇の本当の理由が、当該従業員が待遇改善を求めたり、労働組合へ加入したことにあると判断されてしまうと、不当解雇として認定されることになってしまいます。
そのため、解雇に至った理由について改めて確認しておくことが重要なポイントとなります。
ポイント➃:解雇が性急すぎると判断されるリスクはないか
この点は先ほどのポイント➁に関連するのですが、あくまでも「解雇」は、ほかの手段がないときの最後の手段です。
当該従業員に対して、成長や改善の機会を与えないまま解雇してしまうと解雇が性急すぎるとして不当解雇と判断されてしまうことになってしまいます。
そのため解雇に至った時間的経緯についても改めて確認しておくことが重要なポイントとなります。
ポイント➄:解雇前に配置転換等の機会が与えられるべきだったと判断されるリスクはないか
企業が従業員の能力不足を理由として解雇する場面では、解雇の前に配置転換をして、他の職種での就業の機会を与えることができたにもかかわらず、それをおこなっていない場合、不当解雇と判断されることがあります。
そのため、問題社員に対して企業側が配置転換等を検討し、それを提案しているにもかかわらず、当該従業員が応じなかったといえるかどうか改めて確認しておくことが重要なポイントとなります。
適切な対処と専門家の活用を
このように問題社員に対する対応には様々な方法があり、場面ごとに適切な対応をおこなうことで問題を深刻化させずに解消することが可能です。
場合によっては、問題社員側に労働組合やユニオン等がつくことで対応に苦慮することがあるかもしれませんが、そのような場面であっても弁護士に依頼することで、企業側の負担を軽減し、適切な解決を図ることが可能です。
そのため、問題社員がいるけど、どのように対応したらよいか迷った段階で、ご相談いただければと思います。