不動産トラブルのリスク
不動産を巡るトラブルは、売買・賃貸借いずれの場合も、事業の継続や資産運用に大きな影響を及ぼす重大なリスクです。
売買では、契約締結後に土地や建物の欠陥、地中埋設物、土壌汚染、境界問題などが発覚し、契約不適合責任を問われたり、損害賠償請求・契約解除に発展するケースがあります。
また、代金の支払いや所有権移転手続き、引き渡しの遅延もトラブルの原因となります。
一方、賃貸借では、賃料滞納、無断転貸、用法違反、契約解除、立ち退き交渉、原状回復を巡る紛争などが発生しやすく、貸し手にとっては安定した賃料収入の確保が困難になるほか、借り手側も事業の継続や移転費用負担といった経営上のリスクを抱えることになります。
こうしたトラブルを未然に防ぐには、契約締結前の十分な調査と、契約内容を実情に合わせて適切に定めること、さらにトラブル発生時には迅速に専門家へ相談し、適切な対応をとることが重要です。
賃料回収
事業用物件のオーナー様や保証会社の方にとって、賃料滞納は資金繰りに直結する深刻な問題です。
当初は1か月の滞納だけであっても、そのまま放置してしまうと、半数以上のケースでその後も支払われないこととなっています。
そのため早期に専門家が対応することが、被害を最小限に抑えるカギとなります。
賃料回収の主な方法
1. 内容証明郵便で請求する
まずは、「内容証明郵便」を用いて、滞納賃料の支払いを請求します。
これにより、相手に強いプレッシャーを与え、支払いを促す効果が期待できます。
2. 保証人に対して請求する
賃借人が支払いに応じない場合でも、保証人がいるケースでは、保証人に対して賃料の支払いを請求することができます。
保証人の責任も明確にし、早期の解決を図ります。
3. 法的手続きによる強制回収
内容証明郵便による請求や保証人への請求でも解決しない場合は、以下の法的措置を講じることが可能です。
支払督促
裁判所から督促状を送付
少額訴訟
60万円以下の賃料を迅速に請求
通常訴訟
60万円を超える場合や不動産の明け渡しを求める場合には通常の訴訟を提起
強制執行
判決(債務名義)を取得した後は、相手の財産を差し押さえ、強制的に回収
状況に応じ、最適な手続きを選択し、確実な回収を目指します。
4. 契約解除・明渡請求
滞納が続き、賃料回収の見込みが立たない場合は、賃貸借契約を解除し、建物の明渡しを求める手続きも可能です。
ただし、法的に正しい手順を踏まなければ、逆にトラブルになる恐れもあります。専門家のサポートのもと、慎重かつ確実に進めることが重要です。
なお、賃料を支払わないからといって鍵を勝手に変えるなど不用意な対応をしてしまうと、借主から損害賠償請求されるリスクもあります。
そのため、弁護士のアドバイスのもと慎重に進めましょう。
立ち退き・明渡し交渉
賃料滞納や迷惑行為など問題のある借主には、正当な手続きを踏んだ立ち退き対応が不可欠です。
特に、近年は「追い出し屋規制法」の制定も検討されており、貸主による強引な手続きはトラブルや違法行為に発展する恐れもあります。
立ち退き・明渡しの基本手順
1. 現地調査・状況確認
まずは物件の現状を調査し、契約書やこれまでの経緯を整理し、適切な方針を立てます。
2. 弁護士名で内容証明郵便の送付
賃料の支払いや退去を求める書面を、弁護士名義で送付します。
これにより、借主に強いプレッシャーを与え、早期解決を促します。
3. 占有移転禁止の仮処分
借主が第三者に物件を渡してしまうリスクを防ぐため、裁判所へ仮処分の申し立てを行い、問題解決を確実に進めます。
4. 建物明け渡し・賃料請求の訴訟
交渉が進まない場合や、借主と連絡が取れない場合には、裁判所に訴えを起こし、判決によって法的に明け渡しを求めます。
5. 強制執行
判決後も借主が退去しない場合は、裁判所を通じて強制的に明け渡しを実行します。
必要に応じて弁護士が執行官との交渉のみならず荷物搬出業者と対応しますので、依頼者の方が直接動く必要はありません。
当事務所では、交渉から法的手続き、強制執行まで一括対応することが可能です。
煩雑でストレスの多い借主との交渉も、弁護士が代わりに対応いたします。
賃貸契約の更新・敷金返還
賃貸契約の更新や賃料の増減交渉、敷金返還についても、法的なルールを理解した上で慎重に進める必要があります。
1. 契約の更新について
契約期間満了時には、以下の2つの更新方法があります。
合意更新
貸主・借主が話し合い、条件を確認のうえ更新する
法定更新
契約期間が満了した後も、借主がそのまま使用を続け、貸主が異議を述べない場合に、以前と同じ条件で自動的に更新される
特に法定更新は、建物の有無によって法律上の扱いが異なるため注意が必要です。
また、貸主が更新に異議を申し立てる場合には、正当な理由が求められるため、トラブルになりやすいポイントといえます。
2. 賃料の増額・減額
契約期間中に賃料を一方的に変更することは原則できませんが、当事者同士の合意があれば、増額・減額も可能です。
ただし、合意に至らず紛争になった場合には、まず調停を行い、それでも解決しない場合には訴訟になるケースもあります。
「賃料が不当に高い気がする」「貸主から突然の値上げ要求があった」などの場合には、早めの専門家相談がトラブル回避のポイントです。
3. 敷金の返還
退去時には原状回復費用が差し引かれるのが一般的ですが、過剰な請求を受けたり、不当に敷金が返還されないケースも多く見受けられます。
「思ったより敷金が戻ってこなかった」「費用の説明に納得できない」という場合も、専門の弁護士が状況を確認し、適正な返還額を主張いたします。
不動産の契約トラブルは「契約書の内容」と「法律知識」の両方が重要です。自己判断で対応すると、後に大きな損害につながるケースも少なくありません。
不動産売買
不動産売買は取引額が大きいため、契約書の内容や物件の現地確認を怠ると、思わぬ損害やトラブルに発展します。
特に注意すべきポイント
1. 現地確認(現地調査・物件の欠陥チェック)
購入した物件が実は他人に賃貸されていて使えないケースも実際に発生しています。
まずは現地に足を運び、建物の状態・使用状況を直接確認することが重要です。
また、建物に重大な欠陥(瑕疵)がないかも必ず確認する必要があります。
不具合が発覚した場合、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、建物の基本構造部分については引渡し後10年間、修補などを請求する権利があります。
不動産業者任せにせず、土地・建物ともに丁寧な調査をおすすめします。
2. 登記簿の確認(所有者・権利関係のチェック)
物件の所有者や、抵当権・地上権などの権利関係は、不動産登記簿で確認できます。
売主以外の共有者がいる場合や、金融機関の抵当権が設定されている場合もありますので、必ず確認し、後々の権利トラブルを回避しましょう。
3. 重要事項説明の確認
不動産購入時には、宅建業者から「重要事項説明」が行われます。
権利関係・用途制限・法令上の制限など、物件に関する重要な情報が説明される場面です。
この説明に誤りがあった場合、契約の取消しも可能となりますので、不明点は必ずその場で確認し、納得するまで説明を求めましょう。
4. 用途地域の確認(利用制限の確認)
土地には、都市計画法に基づき「用途地域」が設定されており、住宅用・商業用・工業用など用途が制限されています。
用途地域によっては、事業計画に制限がかかる可能性もあるため、事前に都市計画図で確認しましょう。
5. 申込証拠金・手付金の確認
不動産取引では「申込証拠金」や「手付金」の支払いが発生します。
特に手付金は契約解除の際の条件にもなるため、金額や取り扱い方法、返還の可否を必ず確認しましょう。
取引の安全性を保つためにも、契約前に条件を明確にしておくことが重要です。
当事務所では、契約書の作成・チェック、交渉代行、法的リスクの洗い出しも対応可能。不安な点は事前に弁護士にご相談いただくのが安全です。
不動産トラブルを未然に防ぐために
不動産契約は条項も多く、法律上の取り扱いも非常に複雑です。
「なんとなく大丈夫だろう」と契約してしまい、後から大きなトラブルになった事例も珍しくありません。
当事務所では、これまで多数の不動産賃貸借トラブルを解決してきた実績があります。
契約更新や賃料交渉、敷金トラブルなど、事前のご相談でリスクを回避することが可能です。
些細な疑問でも結構です。お気軽にご相談ください。
経営者の皆さまの事業の安定と安心のため、全力でサポートいたします。