学校は、子どもたちの成長を支える場であると同時に、保護者や地域社会との接点となる場でもあります。
そのため教育現場では多種多様なトラブルが発生する可能性があり、対応を誤ると学校や教職員個人が法的責任を問われるケースも少なくありません。
ここでは、教職員が押さえておくべき代表的な法的リスクとその対応ポイントについて、説明いたします。
いじめ・不登校対応と学校の責任
いじめ問題は、学校に対する社会的・法的責任が最も問われやすい分野のひとつです。
文部科学省の「いじめ防止対策推進法」では、早期発見・迅速対応・関係機関との連携が明確に求められています。
対応のポイント
- 「いじめ」の定義を正しく理解し、報告・記録を徹底すること
- いじめを認知したら即対応し、事実関係の調査を怠らないこと
- 保護者との情報共有と記録を継続的に行うこと
- 第三者委員会・教育委員会との連携を怠らないこと
このような対応を怠った場合、被害生徒や保護者から損害賠償請求を受けるリスクがあります。
モンスターペアレント対応と記録の重要性
近年増加しているのが、いわゆる「モンスターペアレント」と呼ばれる、教育機関に対して自己中心的で常識を超えた要求を繰り返す保護者による不当な要求・長時間の苦情・名誉毀損行為などです。
対応のポイント
- 感情的にならず、複数人での対応・記録の徹底すること
- 明確なルールを伝え、「話す時間・方法」にも制限を設けること
- 管理職・教育委員会・弁護士と連携し、学校単独で抱え込まないこと
- 教職員個人が攻撃対象になる前に、対応の組織化を図ること
悪質な場合は、名誉毀損や業務妨害として法的措置(警告文の発出・損害賠償請求など)を検討することも考えられます。
教職員の指導と「体罰・ハラスメント」リスク
たとえ、教職員が善意のもと指導をおこなった場合であっても、受け取る側にとって「行きすぎた」と感じさせる行為があれば、体罰・パワハラと捉えられるリスクがあります。
対応のポイント
- 身体的接触を伴う指導は慎重に(例:肩を叩く、腕をつかむなど)
- 感情的な叱責、人格否定的な発言はハラスメントと見なされやすい
- SNS等での不用意な発信や連絡もトラブルに発展する恐れあり指導の正当性が問われた場合、教職員個人が訴えられる事例も増えています。
学校事故と法的責任
体育・部活動・校外学習中の事故では、安全配慮義務違反が争点になることがあります。
安全配慮義務違反を巡っては、特に「予見可能性」や「防止措置の有無」が問題となります。
対応のポイント
- 活動前のリスク評価と保護者への説明(同意書など)
- 緊急対応マニュアルの整備と訓練
- 活動中の監督体制の明確化(誰がどこを見るか)
不幸にして事故が生じた場面でも、その後の対応が不十分であったがために損害賠償請求を受け、訴訟に発展することもあります。
そのため、具体的な事後対応の記録と報告が極めて重要です。
法的トラブルへの備え ― 教育現場にも「顧問弁護士」という選択を
学校や教育委員会が、すべての問題に対し完全な法的判断を行うのは困難です。
しかし、事前に法的な視点を取り入れておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
当事務所では、以下のような形で教育機関の法的サポートを行っております。
- 苦情・クレーム対応に関する助言
- 指導法や対応方針に関するリスクチェック
- 記録文書・通知書の文案作成支援
- 職員向けの法律研修の実施
- 顧問契約による定期相談 など
学校の信頼を守るために ― 専門家の関与を日常化する
教職員が教育に集中するためには、外部専門家による支援体制が欠かせません。
当事務所は、法的トラブルの「事後対応」だけでなく、「予防と体制整備」のパートナーとして、教育現場を支えます。
弁護士が必要に応じて現地に訪問し、関係者との面談への同席や、代理人としての対応も行うことで、実際の現場を知るからこそできる、現実的で実効性のあるサポートをご提供いたします。
子どもたちと先生方が安心して過ごせる教育現場づくりのために、どうぞお気軽にご相談ください。